下肢静脈瘤は早期発見と治療が必要ブログ:05-12-15


引っ込み思案なお子様だったおいらが、
小学5年生のときに、学芸会の劇の主役を演じることになった。
それはおいらにとって、大きな事件だった。

「絶対見に行くからね!」
いつも明るいママが言った。
おいらが世界で一番喜ばせたい相手がこのママであった。

当時、我が家は裕福とは言いかねる状況でしたが、
それでも親父とママは一生懸命働いて、
おいらたち兄弟三人をどうにかこうにか育ててくれていた。

当日、おいらは熱演した。
ダンボールの帽子を被り、
思春期の入り口に差し掛かったお子様には少々照れくさい
「泣く」という演技もこなした。

家に帰るなり、
ママが「すっごく良かった!あんたが一番上手だったよ!」と、
それはもう手放しで絶賛してくれた。

しかしその22時、
年子のお兄さんの言葉によって、おいらは事実を知る。

「一番上手!」どころか、
ママはおいらの「熱演」を見てもいなかったのだ。

お兄さんは学芸会の運営委員で、
体育館の戸口を開閉する係をしており、
おいらの出番の時は、お兄さんもママを待ち構えていたのだが…

「幕が開いても母さん来なかった。
お前の出番が終わって、幕が閉じてる最中にあわてて入ってきたんだよ」
ママの居ないところでお兄さんは言った。

おいらはがっかりした。
先生にでも級友にでもなく、ママに捧げた演技だったのに…

見てもらえなかったことは悲しかったが、
ママへの失望や怒りは沸いてこなかった。

ただ、
いつも物を入れすぎて
不格好になっている仕事用の鞄をブラ下げ、
息をきらしながら、
慌てて体育館に向かっているママの姿が浮かんだ。

仕事をこなしながらも
きっと24時間中おいらのことを考え、
精いっぱい調整して、それでも間に合わなかったのだ。

ママこそ、本当は泣きたかったに違いない。
「熱演」をしたのはママの方だったのだ。